砂時計が止まる日
「ただいま〜」
私がそう言って家に入ると奥からさっきの私以上に慌てた足音が聞こえてくる。
「姉ちゃん!心菜が!」
類が急いで玄関に飛び出てきた。
「心菜がどうしたの?」
「いなくなった!」
その類の言葉に私の全身に悪寒が走り、体がぴたりと動かなくなって持っていたカバンを床に落とした。
「え?」
私の思考回路は完全に停止。
気付けば自分の傘を手に取り、閉めたばかりのドアを押して外に出た。
「姉ちゃん!」
「それより心菜のことの方が大切だから!」
家の柵を開けようとすると後ろから家のドアから顔を出して言う。
「でも、やっぱり濡れると良くない!」
「大丈夫よ、ちゃんと渡されたもの飲んでるんだから!」
私にまた否定の言葉を重ねようとする類の目を見てその言葉を紡がせることを阻止した。
私が小さく頷くと類も頷いたので私は傘をさして雨の降る中、走り出した。