砂時計が止まる日
もう家を出てからどれだけ走っただろう。
こんなに走ったのはもう何年も前の話。
ねえ、心菜。
お姉ちゃんは気付いてる。
あなたがなんでいなくなったのかも、何を伝えたいのかも、あなたが今どこにいるかも。
心菜がそんな思い詰める必要はないの。
「心菜!」
私は海辺の公園に着くと私はそう大きな声で可愛い可愛い妹の名前を呼んだ。
私の声にそこにいた1人の女の子が振り返った。
「やっ、ぱりここに、いた...」
私は途切れ途切れそう伝えた。
フラフラする私に心菜が駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん、なんで来たの...」
そう言う心菜の目は今まで見たことのないほど冷め切っていた。
「なんでって、心菜を迎えに来たの。」
「迎えなんていらない!
私はお姉ちゃんのようにはなれないの!
お姉ちゃんみたいにいい高校に推薦で入って、バイトしながら生徒会長して。
私、そんな人になれないよ!
類だって高校はスポーツ推薦で行くことになるし、きっと将来は凄いプロの選手になる!
でも、私は!私は!
何も出来ないからお姉ちゃんやお母さんの邪魔にしかならないの!
そんな私のことをお姉ちゃんは可愛い可愛いって言ってくれる。
だから私もそう言い続けてもらえるように自分なりに気を付けてきた!
でもそれで何かになる訳じゃない!
結局お荷物にしかならない!
だから!
お荷物の私じゃなくなるまで私はお姉ちゃんに甘えたくない。」
そう語る彼女の目の光は強く、でも微かに揺らいでいた。