砂時計が止まる日
I want to be someone's hope.
次の日、僕が生徒会室の前を通りかかるとそこから荒木の声が聞こえた。
「馬鹿なの!?
まだ本当のことを伝えてないなんて、冗談はよして!
もし、彼のことが大切なら、本当のことを伝えるべきよ!
ずっと探してた砂時計の男の子に会えたんでしょう!?
それなのに、なんで伝えないの!」
きっと電話で新垣と話しているのだろう。
新垣が“本当のこと”を僕に隠している。
「もういい!
言い訳なんて聞きたくない!
由羅がそう思うなら勝手にそうすればいいじゃん!」
そうしてがたっと大きな音がした。
荒木が取り乱すことは新垣が関わるとよくあるけれど、こうやって2人が口論になることは僕が知る限りはない。
放課後、荒木の言葉を不思議に思いながら新垣の家のインターホンを押した。
出てきたのは新垣自身で、今は新垣以外は留守だそうだ。
通されたのは新垣の部屋ではなくてリビングだった。
「今日はね、お昼辺りから調子がいいの。
いつもはベッドから起き上がるのも億劫になるぐらいなんだけど、今日はご覧の通り元気。
久しぶりにメイクしちゃったり。」
楽しそうに笑う彼女の目尻をよく見るとかすかに細く薄いラインが見えた。
「今日はね、色々考えて見てもらいたいもの、引っ張り出してきたんだ。」
彼女は僕をダイニングテーブルの席に座らせて置かれていた大きな本を指さした。