砂時計が止まる日
誰かの希望になりたい
1組26番 新垣由羅
私はごくごく普通の家に産まれました。
ずっとその先も普通の子供として生きていく予定でした。
けれど、その“予定”は予定でしかなくて私が4歳の時、大きくズレました。
確かに体が強いとは言えず、近所の小児科の常連でした。
ある日、私は突然の過呼吸と目眩に襲われ、意識を失い救急搬送されました。
運ばれた大きな病院での検査の結果、私の体に潜む病魔の正体がわかりました。
私の意識が戻ってから病名が伝えられましたが、私の記憶にはありません。
その後、自分の置かれた状況がわかった頃から今も私は病名を聞くことを拒んでいます。
私の父は私の病気を知って、育休中の母、病気を抱えた私、まだ物心のつかない弟、そしてまだ母のお腹の中にいる妹を捨て、離婚届だけを残していなくなったのです。
私の病気は父を変えてしまうほどのものでした。
この病気について私が知っていることは最近発見された珍しい先天的な病気で、現代の技術では治癒どころか進行を止めることも不可能だということだけ。
長期生存確率0%。4歳の私は長くてあと8年しか生きられないと伝えられました。
けれど今、私はここにいます。
8年以上が経ったある日、私の体から腫瘍が消えました。
何度も何日にもわたり検査を受けても腫瘍を見つけることが出来ませんでした。