砂時計が止まる日
僕の目を強く覗き込んでくる彼女。
その目はきっと僕のことではなく、何か大きなものを見ているのだろう。
「この前倒れた時の検査で病気の症状が見つけられた。
これからどうなるかわからない。
これが再発かもしれないし、見えなかったものが見えたのかもしれないし、また違うのかもしれない。
何もわからないから、この先何が起きるかなんてわからない。
もし最悪の場合になるって言われても、白川君だけは私を置いていかないで。
私の居場所でいてほしいの。」
彼女は目にいっぱいの涙を溜めながら言う。
きっと本当は不安なんだろう。
でもそう簡単にそれを言葉にできるほど器用な人ではないことを僕は知っている。
「わかってる。置いていかない。
僕は新垣の居場所で、新垣は僕の居場所。
何があっても隣に居るから。」
誰よりも器用で、誰よりも不器用な彼女を僕はこの手で守りたいと思った。
小さく震えるその小さな手を包み込んだ。
「私、絶対。希望になるから。」
「うん、なれる。
だって新垣は誰よりも強いんだから。」
もう空気がすっかり冬になり、新しい年の足音が聞こえ始めたその日、僕と新垣は2人で同じ未来を望んだ。