砂時計が止まる日
棺の中についこの前まで隣にいた新垣がいるなんて、信じられなくて。
出棺の時もただ信じたくない現実から目を背けながら運んだ。
「待って!嘘だよね!待って!由羅!」
荒木のように泣き叫ぶこともできない。
「ねえ、ちゃん...」
類君のようにただ悲しみを感じることもできない。
「...っ、お姉ちゃん信じてて。夢は叶える、から。」
心菜ちゃんは周りの反対を押し切って新垣との思い出だという白いワンピースを着て参列した。
「由羅、大丈夫。...あなたは私の中で、生きてる。」
新垣のお母さんのように割り切ることもできない。
僕はただ、何も感じられない。
「白川君。これ、由羅くれたものだよね。
金属は火葬できないみたいで、こっちで処分するわけにもいかないから。」
新垣のお母さんから渡されたのはピンキーリングだった。
「ありがとうございます。」
僕はそのリングを左の小指にはめた。
きっと新垣には大きかっただろう。僕が付けるとすこし小さいぐらいだ。
きゅっとした指の圧迫感が僕を変えてくれた。
“私は白川君の居場所、白川君は私の居場所”
新垣のそんな声が聞こえた気がした。
そうだ、僕は彼女の居場所で、彼女は僕の居場所だった...そしてこれからも。
僕は彼女の居場所として恥じないような人になりたい。
またいつか会った時、彼女に笑ってもらえるように。