砂時計が止まる日


今日もまた新垣の家へ足を運んだが家の前で諦めてしまった。



僕は仕方なく、カフェへと足の向きを変えた。



「いらっしゃい。」



マスターが少しだけ笑みを浮かべながら言った。



ここは変わらない。時間の流れも、誰もが笑顔なのも。

ただ、時々店員さんが悲しそうな顔をすること以外は。



僕は当たり前のように今までと同じ席に座った。



あぁ、これも違った。



僕の座る席の前に新垣の“ゆー”と書かれた名札が置かれ、メニューの書かれた黒板の横に彼女の写真が飾られるようになった。



「ゆーちゃんが亡くなってから結構時間が経ったけど白川君は変わらないね。」



「すいません、彼女の存在が大きすぎて。まだ、立ち直れないいんです。」



僕はティーカップの中のダージリンティーを飲み干した。



僕は彼女がいた時のようにここに長居はしなくなった。



「そういえば、昨日ゆーちゃん、お墓に入ったって。

行ける時に行ってあげな。」



会計を済ませてカフェを出ようとした僕にマスターが教えてくれた。



そろそろ、僕も向き合わなきゃいけないのかもしれない。




本当に大切で愛おしい存在。

会いに行かなきゃ、と僕は足を運ぶ。



荒木に連絡して場所を教えてもらった。


花を買ってその墓地に向かった。

新垣家之墓と書かれた墓石に刻まれたばかりの新垣由羅という名前。



僕は花を手向け、線香をつけた。



「新垣...」



僕は小さくその名前を読んだ。

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