砂時計が止まる日
「白川君?」
僕が墓石の前でしゃがんでいるとそう声をかけられた。
振り返ると大きな花束を持っている新垣のお母さんがいた。
「お久しぶりです。」
「来てくれたんだ。」
彼女の声は彼女の顔とは逆に少し明るかった。
「すいません、由羅さんがいない、っていうことを受け入れられなくて。」
「そうだよね。
私もまだ立ち直れないもの。
でも、来てくれただけできっと由羅は喜んでると思うわ。」
新垣のお母さんは少しだけ笑みを浮かべて墓石を見つめる。
「そう、病院からあの子のベッドにたくさん手紙があるって連絡があったの。
私に、類に、心菜に、一夏ちゃんに、璃々花先生に、学校の人たち、カフェの人たち...
それから白川君にも。」
彼女はかばんから青い花が書かれた白い封筒を取り出した。
受け取った封筒には“白川君へ”と新垣の文字で書かれている。