砂時計が止まる日
「せっかくだし、お茶しようよ。
正当な理由があるとはいえ、生徒として規則を破ったもの同士。どう?」
そのいたずらっ子のような笑顔で備え付けのティーポッドの蓋を開く姿に私は一瞬みとれてしまった。
「じゃあ、お言葉に甘えましょうかね。」
私がそう笑うと彼も笑って1つの椅子を引いて“どうぞ。”と言った。
私は促されて椅子に座った。
やがて茶葉の香りがしてきた。
その香りと共に奥から白川君が出てきた。
「ダージリン?」
私の言葉に白川君は驚いた顔をした。
「あたり。香りだけなのによくわかったね。」
「私の家、母子家庭でしかも子供3人なの。
母親も一流企業勤めだけどやっぱり教育費と光熱費、家のローン、あと弟の野球でいっぱいいっぱい。
だから私が高校上がってからは母さんのパートを減らして本職に打ち込んでもらってる。
その分私がカフェでバイトして食費を稼いでるの。だからお茶には詳しいの。」