砂時計が止まる日
教室からしばらく歩いた後、白川君は足を止め、こっちを振り返り頭を下げた。
「ごめん、僕が行くの遅くなったせいで。
それにまるで彼女みたいに言っちゃって。」
彼がそう平謝りしてくるのに私は戸惑ってしまった。
「いいの!白川君がきてくれなかったら私、断りきれなかったし!
...それに嬉しかった。」
私の言葉に頭を下げていた彼がばっと顔を上げ私を見る。
目が合うと少し恥ずかしくなって視線逸らして笑った。
「...行こっか。」
彼は少しの沈黙のあと、そう言って私に背を向けて前へ歩いていった。
私は少し急ぎ足で彼の横に並んだ。
「どこ行く?行きたいところとか、食べたいものとか。」
私は彼の問いに少し考える。
すると、ふと昨日の一夏の言葉が脳裏をよぎる。
「タピオカ、飲みたいかも。
あ、昨日、一夏が12時半から午後の分売り始めるからそこが狙い目だって教えてくれて...」
白川君は私の言葉に少し驚いてから笑った。
「じゃあ、いこっか。」
彼はきっと私を同情して誘ってくれたわけではないと思う。
ただ、ずっと走り回っている私を見て、そんな空間から連れ出してくれようとしているのだと思う。
同情、に似ていて同情ではない。
私はこれに当てはまる言葉を知らない。