砂時計が止まる日
私は台車を借りに事務室に向かった。
「失礼します。
記念品運搬用の台車を借りにきました。」
「あ、新垣さん。来ると思ってたからそこに用意してあるよ。」
私が顔を覗かせると事務員の松井さんがそう言う。
中年の関西出身の彼女、ちょくちょく顔を出す私とは顔見知り。
「ありがとうございます。週明けに返しに来ますね。」
私はそう言って台車を押して事務室を出た。
私は事務室のあるC棟を出て渡り廊下を通りB棟の生徒会室に向かった。
途中、何人かの先生とすれ違うとみんな私の姿を見て“お疲れ”だったり“頑張れ”と言ってくれた。
私が顔を上げると向こうから2人の男性が歩いてきていた。
私はその姿を見て台車ごと廊下の端に避けて道を開けた。
「おお、君は確か...」
私の横をすれ違う時その男性のうちの1人が足を止めた。
「生徒会長を務めております、新垣由羅と申します。」
私はそう言って頭を下げた。
還暦をとおに過ぎたであろうこの人は白川学院長。
つまりは白川君のお爺様。
その隣には白川君の叔父にあたるこの高校の校長がにこにことしている。