砂時計が止まる日
「新垣さんもうちの車に乗っていくかい?」
「え?」
私は白川君のお父さんの言葉に思わず聞き返した。
「周りが来賓ばかりじゃ落ち着かないだろう?
それならこっちの方がいいんじゃないか?」
学院長たちばかりと同じ車にいる方がよっぽどいたたまれない、とは言えず私ははぁ、としか返せなかった。
「まあこう言ってることだし来なよ。」
そう言って彼は私の手首を掴む。
「僕は新垣と一緒がいいけど。」
そう言って彼は歩き出す。
玄関ロッカーで靴を履き替え、バッグを持ち外に出る。
私の手首を持つ手は私より一回りも二回りも大きくて骨ばった男の子らしい手だった。
普段は全く意識もしないのにどうしてか意識してしまう。
私と彼の体温の差を感じると胸が高鳴る気がした。
なんでだろう、彼の髪型がいつもと違うから?
さっきまでの緊張の糸が切れたから?
今日は何が違うの?
私は口の中でそんなことを呟きながら彼に腕を引かれていった。