砂時計が止まる日
駐車場に止められた1台の高級車。
テレビでも見たことのある7人乗りの車。
私はその黒く輝く車を見ていた。
「あら、あなたは。」
私はそんな声が聞こえて振り返った。
そこには幼稚園の園長がいた。
「ぁ、高校生徒会長の新垣由羅と申します。」
私は頭を下げた。
「いつも蓮がお世話になってます。」
そう言って彼女ふわふわした人懐っこい笑顔を見せる。
私より5センチぐらい低い身長、笑うとできるえくぼ、眉尻が少し下がっていて柔らかい印象。
まさに幼稚園の園長先生、という感じだった。
「近くで見ると本当に可愛いわね...
私もこんな姪っ子が欲しかったわ〜」
「僕では不満ですか?」
園長の言葉に白川くんの苦笑いを見せる。
「いえいえ、蓮君のような優秀な甥っ子がいて嬉しいわよ。
でも可愛い姪っ子も欲しいじゃない?」
彼女はさらに眉毛を下げた。
どこかで聞いたことがある。
彼女はがんの治療で子供が産めない体になってしまったと。
「さ、2人とも乗っちゃって。」
彼女は私が車に乗ることをわかっていたのだろう、私と白川君を車の中に入れる。
「おじゃまします...」
私は恐る恐る3列シートの1番後ろに腰かけた。
私は背筋を伸ばして座っていた。