砂時計が止まる日
ホールに着くと彼は大きな扉を開け、私を中に入れてくれた。
そこは明るく煌びやかで母子家庭で貧乏な私は見たこともない華やかな場所だった。
「そんな、緊張しないでよ。」
彼は棒立ちになっている私の手を取る。
そっと動き出した彼につられて私も動き出し、階段を降り始めた。
「蓮君、しばらく見ない間に大きくなったね。立派になって。
そちらは高校の生徒会長さんだっけ?」
私は名前もわからないおじ様に頭を下げた。
「はい、とても頼りがいのある同輩です。」
白川君はちらりと私を見ながら目の前のおじ様に笑いかけた。
そんな彼のちょっとした行動に対しても胸が高鳴る。
今日の私はどうかしている。
私は白川君の後ろで会話を聞いていた。
やがて会話が終わると白川君に軽く手を引かれ、私も歩き出す。
「飲む?ジンジャエールだけど少し辛いかも。」
「あ、ありがと。」
白川君が渡してきたのはスパークリングのお酒にも見えるジンジャエールだった。
彼は私に渡すと自分の分も取ってまた歩き出した。
歩くスピードは凄くゆっくりなので歩く途中で飲み物に口をつけることができた。
明らかに高級そうな小さなシャンパングラスに入れられたジンジャエールはいつもより大人な味だった。