砂時計が止まる日
「あ、白川君!」
休み時間、教室に戻ると荒木と話していた新垣に声をかけられた。
「あ、クッキー受け取ったよ。
あとでお昼にでもいただくね。」
「私のなんかだから全然だけど...」
新垣はそう言って俯いた。
「新垣がわざわざお礼を持ってきてくれただけで嬉しいから。
あ、今日カフェいる?
新垣いるなら行こうかなって。」
「うん、閉店までいる。お待ちしてます。」
彼女はそう言って笑った。
そんな消えそうな強い光のある瞳を細めて笑う姿はやはり新垣は変わらないな、と思わせる。
彼女らしくもあるが、どこか何かを諦めているような、未練があるようなそんな笑い方が好きで、それでいて嫌いだ。
昼休み、食堂で買ったパンを教室で食べているとフライドポテトを片手に持った浅田が前の席に座ってきた。
「珍しいじゃん。
白川っていっつも定食か弁当食べてるイメージ。」
「あぁ、今日はこれがあるからね。」
僕は新垣から貰った紙袋を指さした。
「え、女子からプレゼント?」
「新垣からのお礼。」
少しワクワクしたように言った浅田だったが、僕の言葉を聞いて少し落胆したようだった。
「ちょっと分けてよ。」
「ムリ。」
浅田の提案を即刻却下した。