砂時計が止まる日


僕は照れ隠しで少し視線を外してエスプレッソのカップに口をつける。



ふと目が合ったマスターは苦笑いをしていた。



「ね、飲み物追加していい?」



「どれにします?」



僕はメニューを見た。



「じゃあアイスティーで。」



「かしこまりました〜」



彼女は伝票を持って去っていった。



「白川君さ、やっぱりゆーちゃんって変なとこ鈍感だから扱い難しいでしょ。



さっきのだって絶対に無意識で言ってるし、自分の可愛さを理解していないから見てて危なっかしいんだよ。



あの子、学校も放課後も家も、どこでも気を張ってるからさ、いつか壊れると思うんだ。

だから、白川君よろしくね。」



マスターがコーヒーを挽きながら言った。



「僕なんかが負いきれる存在なんですかね。」



息を吸うと少し香ばしい匂いがする。



「はい、アイスティーです。
ガムシロップとかミルクとかはそこにあるから使ってね。

私、パン切りに行ってくる。」



新垣は僕の前にコースターとアイスティーを置いていなくなった。



厨房からする匂いはパンが焼き上がる匂いだったようだ。

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