最初で最後の恋


私が教室に戻る頃には、
5限始まりのチャイムは鳴っていて、
廊下は静かだった。

静かな廊下に、
私の足音だけが妙に響く。

教室の前まで来て、
授業に出たくない気分になった。

(さぼっちゃえ・・・)

さぼると決めて、
屋上に行く事にした。

階段を登る足が重たく感じた。
屋上の重いドアを開けると、
思わず目を細めてしまうくらいの
眩しい光が暗い廊下に入り込んだ。

『まぶし・・・』

目を細めながらも、
屋上に足を踏み込んだ。

一人で大の字になって
寝転がってみる。

『私、バカだな。
一人で何やってるんだろ。』

目を閉じてみる。

『あ、さぼりなんかして、
大丈夫なのかな』

不安な気持ちが生まれた。
戻ろうか。ここにいようか。

(どうしよう・・・)

一応、戻ってみようと思い、
ドアの方に歩いていく。
ドアに手をかけた時。

「久しぶり」

低い、聞き覚えのある声が聞こえた。
その声に反応して、私は振り向いた。

「よっ」

そこには、一番会いたくなかった人がいた。

「最近、話してくれないよな。
どうして?俺のこと避けてるの?」

杉本雄大。

『別に、そんな事ないです。』

「嘘でしょ。
俺、わかるんだよ。」

『・・・・・』

本当になんなの、この人。

「ねぇ、君さ、彼氏いるの?」



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