毎日、失恋。
「そうだよね。ほんと、ごめん。ミサ…えっと、お姉さんにも話したんだけど大丈夫って言うから…だけど、自分の生徒を騙し討するみたいなこと、良くなかった。この通り、申し訳ない。」

私の担任で私の姉の彼氏でもある岡崎先生が深々と頭を下げる。

先生のこういう誰に対しても真摯で真面目なところが私はーーー

そう、私は先生が好き。しかも初恋だ。

だけど先生はお姉ちゃんの彼氏であって…。

決して届くことのない思い。

心の奥深くにしまい込まなきゃいけない思い。

目の前で深々と頭を下げるその姿を見てまた溜息が出そうになったのをなんとか堪える。

「本当に驚いただけですから。後、この件で呼び出すのもう止めてください。悪目立ちしたくないんで。」

行き場のない思いが苛立ちとなってつい先生に対して強い口調になってしまう。

「ああ…、そうだよね。高橋さん、成績良いのに僕が呼び出すと不自然だよね。あー、もうほんと駄目だな。頼れる兄貴には程遠いね。あっ、せっかく入れたから珈琲冷めないうちに飲んでって。」

「いえ、これ以上、話ないなら帰って良いですか?帰りに図書館に行きたいので…。」

早くこの場から立ち去りたい。

「ああ、そうか。うん。じゃ、あまり遅くならないように。気をつけて帰りなさい。」

その言葉の半分は背中で聞きながら、まるで海の底に落っこちて酸素を求めもがくみたいに準備室のドアを開け出ていった。
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