ねぇ、こっちを向いて
「は、はぁぁぁ!?ありえない!普通、約束したのにドタキャンする?…無理無理、そんな迷惑以外の何者でもないしそれに、豊永さんかなし───んっ!?」
最後まで言えなかった。
言わせてもらえなかった。
だって、私の体は壁に押し付けられてて、目の前には端正な顔立ちの笹倉くんがいるから。
「ねぇ東屋。東屋にとって、俺はどういう存在?」
いつも構ってきて、その上女たらしで、でも成績は良くてスポーツ万能で、とにかく一番嫌いな人種。
……なんて、言えなかった。
だって、チラッと私を除く目は本気で、それでいて少し不安げに揺れていたから。