耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

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白いコンクリートの壁に、焦げ茶色の木枠にはめ込まれたガラスの扉と出窓。壁の上部はは木枠と同じ焦げ茶色のホロに覆われていて、一番左端に【café La poire】と書かれている。

ここは、カフェ ラプワール。美寧が働く喫茶店だ。

レトロな雰囲気の外観を横目に、美寧は店の裏手側に回った。
細い路地を入ったところにある勝手口を開き、店の中に足を踏み入れる。

「おはようございます。」

「おお、美寧。おはよう。」

厨房にいたマスターが、チラリと視線を上げて挨拶を返してくれた。手にはフライパンが握られていて、何かを炒めている途中のようだった。

勝手口を入ったすぐのところは、狭いながらも机や棚が並べられた事務所スペースとなっている。その一番奥が厨房になっていてカウンターと繋がっているが、エル字型になっているので店内からは厨房スペースまでしか見えない。

ラプワールは商店街の一番端にある小さな喫茶店だ。
内装は昔ながらの純喫茶のようなレトロ感があるものだが、その中にモダンなインテリアを取り入れていて、マスターの趣味なのかとてもお洒落だ。どの年代の客にも違和感なく馴染むような、ゆったりと寛げる雰囲気の店だ。

ラプワールはそんな店なので、店主であるマスターの方針もあって、一人の客がゆったりと珈琲を片手にくつろいで行くことが多い。長い間マスターが一人で切り盛りを出来ていたのは、そういった店の特性からだった。

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