耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「俺の話をしていたのですか?」
隣に座り直した美寧に怜が問いかける。
「う、うん……ここに初めて出勤した時のことを、ね。」
「ああ……」
軽く頷いた怜は、チラリとマスターの方に視線を投げるが、彼はこちらに背を向けたままだ。きっとその視線の意味を感じ取っているはずなのに、分かっていて敢えてこちらを見ないようにしている気がする、と怜は思った。
「れいちゃんはちゃんとお昼食べたの?」
「はい。ミネに言われましたからね。」
“ちゃんと”かどうかは別だが。
「ミネはお昼、何でしたか?」
「おいなりさんだったよ!」
「おいなりさん、ですか……珍しいですね。」
「うん。奥さんが作ってたんだって。おあげが甘くてとっても美味しかったんだよ。」
「朝から奥さんが張り切って大量生産していたお裾分けだ。」
カウンターの中からした声に顔を向けると、怜の前にコーヒーが置かれた。