耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

そんな彼の寂しさを埋めてくれたのは、もちろん妻の存在とこの店だった。最近になってそれに美寧が加わった。

美寧はどこか出会った頃の娘に似ている。
小柄なところやコロコロと変わる好奇心旺盛の表情もあるが、心の奥深くに潜んだ“闇”のようなものを感じることがある。それは普段は見せることのないものだが、ふとした瞬間に、瞳の奥に寂しげに翳るときがあるのだ。

娘のそれは、きっとシングルマザーだった母親が仕事でほとんど彼女にかまえなかったからだろう。それも自分と母親が結婚してからは徐々になくなっていった。

(美寧はいったいどんな闇を心に抱えているんだろうか……)

自分が助けてあげられることならそうしてやりたいが、きっとその役目は自分ではなく彼なのだろう。

洗い物をしながら物思いに耽っていると、鳴る予定のないドアベルがカランと音を立てた。
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