耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「それに何かあれば私たちもいるでしょ?もしも美寧ちゃんが何か困っていることがあれば、あなたも私も出来ることはなんでもするでしょう?」
「もちろんだ。」
「だから大丈夫。」
眼鏡の奥の瞳を和らげてにっこりと微笑んだ妻に、マスターは安堵の息を吐きだした。
「そうだな。俺たちもいるもんな。」
「そうよ。それよりも早く杏奈のところへ行きましょう。今日はあちらに泊めてもらうことになっているけれど、杏奈の体調も気になるし、早く行ってあげた方がいいわ。」
「そうだな。急ごうか。」
マスターは急いで片付けを済ませ、鍵を閉めようとドアに近付いた。そして「あっ」と思い出したようにカウンターの方へと踵を返した。
カウンターから持って来たのは一枚の紙。
それをドアの外側に貼ると、今度こそ鍵を掛けた。
そうして奥さんと二人事務所の勝手口から外に出る。二人は足早に店を後にした。
店のドアに貼られた紙には
『臨時休業のおしらせ
明日七月二十九日(月)は、店主の都合により
臨時休業とさせていただきます』
と書かれていた。
【第五話 了】 第六話に続く。