耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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「三十六度ちょうど。熱は無いわね。」
「……はい。」
リビングのソファーに座って目の前の女性に返事をした。
「はい、大きくあーん。舌出して。」
美寧は言われるままに口を開け、舌を伸ばす。
「うん、よし。正常。」
舌圧子とライトを戻したその女性は、それまでの真剣な瞳を和らげた。
「ユズキ。来るんだったらそう言ってくれたら良かったのに。」
キッチンからコーヒーを運んで来た怜が言う。
「たまたま近くまで来たから久々に美寧ちゃんの様子を見ておこうと思ってね。お邪魔だったかしら?」
「いや、構わない。」
「『邪魔じゃない』とは言わないんだ」という突っ込みを受け、無表情の怜とは反対に、美寧の頬が再び朱色に染まる。
「来た時に美寧ちゃんが赤かったから、また熱でも出たのかと思ったわ。」
「えっ、…そ、それは……」
「料理の途中でキッチンが暑かったのだろう。」
なんて説明していいのか分からずしどろもどろになってしまう美寧の横で、怜がサラリと答えた。
「まあいいわ。患者が健康なら私はそれで。」
何かを見透したような瞳に、美寧はなぜかむずむずと落ち着かない気分にさせられ、視線を床に落とした。