耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

(竹下君のご両親は三人のお子さんをきちんと育て上げられたんですね。)

竹下を見ながら怜はそう思った。挨拶や食べる姿勢を見れば、どんな家庭で育ったのか分かる。
竹下の母が“弁当卒業”を心から喜んだのは、それだけ彼女が毎日一生懸命子ども達の弁当を作ったからに他ならない。第一、愛情が無ければ二十一年間も弁当を作り続けることなんて出来るはずもないのだ。

(ミネだって―――)

怜にとって大切な存在に想いを馳せる。一瞬思考がそちらに集中しそうになったが、それは竹下の言葉でかき消された。

「これは彼女の手作りなんですよ~。」

怜は、照れの混じる自慢げな笑顔の竹下を見てから、その弁当に視線を落とした。

小さめの俵型おにぎりが三つと少し焦げた玉子焼き。花型にくり貫かれた人参の隣はタコとカニだろうか、切込みの入ったウインナーが並んでいる。

とにかく可愛らしいそのお弁当に、怜はこの場にいないひとを思い浮かべた。

(ミネが好きそうな弁当だな…)

「竹下君の彼女は、料理がお上手なのですね。」

頭で思ったことと全く別のことを舌にのせると、竹下はまんざらもない顔で「そうなんですよ~」と惚気た。
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