耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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「帰りはおそらく七時くらいになると思います。出掛ける時は戸締りを忘れずに。あと、今日も暑いですので熱中症にはくれぐれも気を付けて。あと、迷子にならないように。」
「分かってるもん。そんなにしょっちゅう迷子にも行き倒れにもならないんだから。」
頬を膨らませ、じろりと上目使いで恨めし気にこちらを見上げるミネに、怜は眉を下げる。
(そんなふうに睨んでも可愛いだけだな……)
怜の口に出さない心の声が、ついラフなものになる。
普段は丁寧語を使う相手に対しては、心の声も自然と丁寧語になるのだが、近頃美寧に対しては、それがうっかり崩れてしまう。きっと彼女の前で自分はずいぶん“素”なのだろう。
高熱で倒れていた美寧を家に連れて帰った当初は、彼女に警戒されない為に“准教授スイッチ”を入れて接していた。
怜にとって“ですます口調”は、一定の距離を保つ為になくてはならない処世術。女学生や女性職員に、無用な好意を寄せられず円滑に研究を進めるための術だ。
美寧にもそのつもりだった。
『熱が下がったら彼女は自分の家に帰るだろうし、異常に警戒されたり逆に興味を持たれても困る。』
通りすがりの人助けのつもりだったあの時の怜は、そう考えたのだった。