耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「先生?食べないんですか?」
竹下の呼びかけに怜の意識が今に戻ってくる。竹下はちょうどウィンナーのカニを箸で挟んだままこちらを見ていた。
「ああ…食べます。」
「カノジョさんのことでも考えていたんですか?」
(最近の若者は思ったことはすぐ口にするな……)
育ちの良い竹下ですらそうなのだ。更に年下の学部生たちとランチを一緒にするのは止めておいた方がいいだろう。
「なぜそう思うのですか?」
「先生のお弁当を作ったのはカノジョさんかな、と思って。」
竹下の答えに、怜は自分の手元の弁当箱を見る。
「ああ。これは俺が作ったものです。」
「えっ!そうなんですか!?」
「ええ。」
「すっげ、……先生、料理まで出来るんだ……。」
驚きのあまり砕けた口調に、怜は竹下がまだ二十代前半ということを思い出す。
「すごい、というほど凝った料理は作れませんよ。今日の弁当も夕飯の残りのようなものですし。」
「いや、俺のおふくろでもそんなハイカラな弁当は作りませんでしたよ。ほんと先生は何でも出来るんですね。」
(ハイカラ―――久々に聞きましたね…竹下君は祖父母っ子なのでしょうか……。)
そんなことを思いつつも、口ではきちんと質問に答える。