耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
大学院生のほとんどは、社会に出るのが遅い分、自分の身の周りにかかるお金をアルバイトで捻出している学生が多い。竹下のように自宅から通っているものはまだ余裕があるが、一人暮らしの学生達は研究とアルバイトで毎日あっという間に過ぎてしまう。
「今週は俺がずっとここにいますので、君はお休みしても構いませんよ?たまには遠出してリフレッシュしてきたらどうですか?」
「えっ!?……いいんですか?」
「ええ。実験の経過観察なら俺が観ておきます。まあ、異変があればすぐに呼び出しになりますが。それでもよければ、数日間の夏季休暇くらい問題ありません。」
“藤波研究室”で扱っている実験対象は“微生物”だ。
0.005mmほどしかないとはいえ、“生物”なので生きている。それゆえ、あまり放っておくと死んでしまう。それも実験結果の一つではあるのだが、それでも経過観察を怠らず、原因と結果をデータとして残さなければならない。
となると、実験室が終日空ということには出来ず、夏休みだろうが盆休みだろうが、関係ないのだ。
基本、遠方に実家のある学生には“帰省”というイベントがある。もちろん論文を控えた修士二年生などは残っているのだが、それでもこの時期は研究室が手薄になるのだ。その為、竹下のような博士課程の学生はそのフォローに当たる。むろん指導者である怜もだ。
けれど怜は学会や他大学への出張などで研究室を空けることも多い。結局しわ寄せは博士課程で自宅生の竹下に行くことが多かった。