耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「竹下君にはいつも助けられていますからね。」
「ありがとうございます!」
竹下は目を輝かせながら礼を言うと、残りの弁当を慌ただしくかき込んでお茶を飲み、「俺、用事を思い出したのでお先に失礼いたします」と言って、あっという間に准教授室を出ていった。
出ていく間際にスマホを片手に持っていたので、きっと恋人へ連絡をいれるのであろう。
慌ただしく出ていく竹下を見送った後、怜は弁当の残りにゆっくりと口にする。
(よもやこんなことで学生に気を遣う日が来るとは思わなかったな…)
怜は基本的に教え子には自由にさせているので、わざわざ研究室を休む休まないの連絡は必要ないとは思っている。必要があればこちらからお願いするし、何か有れば言って来ればいいというスタンスだ。
(俺をこんな風にしたのも、きっとミネだろうな……)
年下の彼女を大事にしたい竹下の気持ちが良く分かった。
(流石に十歳以上離れているとは誰も思わないだろうが。)
好きな子の笑顔が見たいのは一緒だろう。
弁当箱の中にあるハンバーグの、最後の一切れを口に入れる。
彼女の小さな手で丸めたそれは、時間が経っても変わらず甘く美味しかった。
これを作り上げた瞬間の、あの可愛らしい笑顔を思い出して、怜は今度こそ誰に気兼ねすることもなくその口元を緩めた。