耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「きゃあっ!」
短く悲鳴を上げると、美寧は床に尻もちをついた。
はずみで左手から皿が飛び出し、少し離れたところでガシャンと音を立て、反対の手に持っていたはずの鍋の蓋が、すぐ目の前を転がっていく。
「ミネっ!!」
キッチンの戸が音を立てたのと同時に怜の声が聞こえた。
床に座り込んで呆然としていた美寧は、駆け寄ってきた彼の方をぎこちなく振り返った。
「れいちゃん……」
美寧の隣に片膝を着いた怜の顔は、彼にしては珍しく、分かり過ぎるほど気持ちが表情に出ている。よほど慌てたのだろう。
「どうした!?何があった?怪我は?」
美寧は黙って左右に首を振る。
申し訳なさと情けなさでじわりと視界が滲み、彼から視線を外した。
美寧に怪我がないことを確かめると、落ち着きを取り戻した怜は、キッチンに入って来た時から鼻をついていた異臭を確かめるべく立ち上がった。
コンロを見ると、思った通りそこには焦げ付いた鍋が一つ置かれていた。
「火傷はしていませんか?」
落ち着いた声で問われ、美寧は再び首を振った。