耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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「帰りはおそらく七時くらいになると思います。出掛ける時は戸締りを忘れずに。それと、今日も暑いですので熱中症にはくれぐれも気を付けて。あと迷子にも。」
朝、家を出る前にいつもと同じ台詞を口にした怜に、美寧は少しだけ不貞腐れたような気持ちになる。
(迷子だなんて。もうこどもじゃないのに……)
前歴があることを棚に上げて、美寧は「分かってるもん」と頬を膨らませる。
そんな美寧に、怜は困ったように眉を少し下げ、口をつぐんだ。
(またやってしまった……)
怜は優しいから口には出さないけれど、きっと美寧に呆れているのだと思う。こんな風に言ってしまうなんて、まるで反抗期の中学生みたいだ。もっとも、中学生の自分は大人に反抗した記憶はないけれど。
(こんなふうな言い方、今まで誰にもしたことなかったのに……)
美寧は今、怜に対して素直に振る舞えない自分に戸惑っていた。
怜を不愉快にさせていないか不安になって、動きの少ないその表情を伺い見る。
すると彼も美寧を見ていて、視線が交わった。
そのまま、怜の顔がゆっくりと近づいてくる。
美寧の体が無意識にあとずさった。
「ミネ?」
「あっ……えっと…、うん、分かってるよ。大丈夫。出る時は帽子も日傘も水筒も持って出るし、戸締りもします。暑いし迷子になるほど遠くにも行かないから。」
早口でそう言うと、不審そうにする怜を誤魔化すように、「もう出ないと遅れちゃうよ?」と言って急かしては、彼を玄関から送り出したのだった。