耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
初めてハンバーグを作ったあの日。口の中を火傷した美寧を気遣って、怜は“恋人休止宣言”をした。
本当は口の火傷などなんともなかったのだが、成り行き上『痛い』と言うしかなかった美寧は、怜が申し訳なさそうにそう宣言したのを止めることも出来ずに受け入れたのだ。
するとその翌日から、怜との触れ合いがパタリと止んだ。
毎顔を『おはよう』や『いってきます』という言葉と共に落とされる口づけも、何気ない時に抱き寄せる腕も、そっと優しく髪を撫でる手も。
それを物足りないと思ってしまう自分は、なんて我が儘なのだろう。
―――怜を拒否したのは美寧自身なのに。
怜の方は特に気にしている様子はなく、あまりに淡々としているので、それが余計に美寧をモヤモヤとした気持ちにさせるのだ。
(こんな気持ちになるのは、私だけなのかな……)
恋人らしい触れ合いを辞めて前のように過ごしていると、これまでのことが夢だったのかも、と思わず考えたくなってしまう。
(ううん……もしかしたら今も夢を見ているのかもしれない……)
もしかしたらあの日雨の公園で倒れてからずっと、自分は夢の中にいるのかもしれない。
そんなふうに考えると、寒くもないのに身震いしてしまうのだ。
(れいちゃんと一緒にいる今が、もし夢だったらどうしよう。)
目が覚めて、またあの冷たい檻のような部屋に一人だったら―――
泣きたくなるほど胸が締め付けられて、苦しさに叫びだしたくなる。
(ううん、違う。夢じゃない。私はここにいる。)
ぎゅっと握った手の感覚を頼りに、自分を励ました。