耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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「肉じゃが―――でしょうか?」
焦げ付いた鍋の中身を確認した怜が口にしたメニューに、美寧は小さく頷く。
「どうして分かったの…?」
作った本人が言うのもあれだけど、鍋の中身は到底肉じゃがには思えない。まったく別の物体に成り下がっている。
「じゃがいもと白滝が見えたのでなんとなく。」
ピーラーで皮を剝いただけで切らずに投入したじゃがいもは、焦げ付いてはいるがその原型は残っている。もっとも切らなかったせいでなかなか火が通らず、煮込みまくった結果、こうして焦がしてしまったのだから、当てて貰っても全然嬉しくない。白滝も同じく溶けて消えなかっただけ。折角の肉も鍋の底で真っ黒焦げだ。
「ごめんなさい………」
「なぜ謝るのですか?」
「だって………」
怜が買っておいた食材を無駄にした挙句、鍋までダメにしてしまって、申し訳ないなんて言葉じゃ済まされない。
こうなったいきさつをきちんと怜に説明しなければならないと、美寧は今にもこぼれ落ちそうな涙を堪え、口を開く。
「れいちゃんが帰ってくる前に…ごはんを作ろうと思ったの……最近のれいちゃん…すごく忙しそう…だから…」
震える声を絞り出すように美寧は続ける。
「でも…結局失敗しちゃって……お鍋も材料もダメにしちゃって……れいちゃんにめいわく、」
『迷惑かけてごめんなさい』と、最後まで言い切る前に、美寧の体がふわりと温かなものに包まれた。