耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
背中から温もりが離れた瞬間、背中がすぅっとして、美寧は反射的に怜の袖を掴んでいた。
「ミネ?」
「あっ、え、…っと、その……」
掴んだ袖と怜の顔を美寧の視線が往復する。
「なんでもない」と手を離そうと思った瞬間、美寧の口からまったく別の言葉が出ていた。
「れいちゃんは他の女の人にもご飯作ったりしたの?」
「えっ?」
思いも寄らぬことを訊かれた怜は、目を見張った。
「えっと…ユズキ先生が大学の時にれいちゃんの手料理食べたって言ってたの。それに……」
「それに?」
「れいちゃんには『女の子が寄ってくる』って……」
「ユズキがそう言ってた?」
おずおずと頷く。
すると怜は少しだけ時間を置いた後、「ふぅ~っ」と息を吐きだした。
「まったくユズキは……」
小さくぼやく怜の眉間にはしわが寄っている。
「―――確かに、ユズキには大学の時に何度か家で料理を振る舞ったことがあります。」
「そうなんだ…」
「けれどユズキと二人っきりと言うわけではありません。もう一人の友人も一緒でしたから。」
「もしかして“ナギさん”?」
「……それもユズキから?」
「うん……」
怜は再び眉間に皺を寄せた後、(お喋りな友人には困りものだな…)と声に出さずに一人ごちた。