耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
懐かしい匂いがする。
新しい畳の匂いだ。
い草特有の爽やかな匂い。美寧は昔からこの匂いが好きだった。
(そろそろおじいさまに、朝の紅茶を淹れてさしあげないと――)
朝食の時に飲む紅茶を淹れるのが美寧の役目。
祖父は珈琲党だが、美寧の淹れる紅茶をいつも美味しそうに飲んでくれた。
白いひげをたくわえた口元を緩め、とても愛おしそうに美寧を見て微笑む。
そんな祖父は、自分にとって心許せる唯一の家族。
だけど―――
(そうだ……おじいさまはもういらっしゃらないのよ………だったらここは?)
美寧は閉じていた瞳をゆっくりと開いた。