耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

二人で黙々と掃除をした甲斐あって、十分後には墓石もその周りもすっかりピカピカになった。

線香の煙が少し揺れながらまっすぐ空に上っていく。線香立ての前にはお供えが置かれていた。

今朝怜が作ったばかりのいなり寿司。その脇には、美寧が今朝庭の花で作った献花がその両脇に供えられている。

怜が墓前に手を合わせているのを、うしろから美寧はぼんやりと見つめていた。

(れいちゃんのお家のお墓ってことは……)

美寧が私室として使わせてもらっている部屋には仏壇がある。
その仏壇には写真が飾られていた。

怜に良く似た男性の隣に優しそうな女性が寄り添うように立っている。
そしてその場所は、怜の家の玄関先。

その二人が誰なのか、美寧はこれまで口にして聞いてことはなかった。

(れいちゃんの…お父さまとお母さま、だよね?……)

焼香の終わった怜が立ち上がる。

「私もお線香上げさせてもらってもいい?」

美寧がそう言うと、怜はほんの少しだけ目を丸くした後ゆっくりと微笑んだ。

「もちろんです、ミネ」

怜と入れ替わりで墓前の前にしゃがんだ美寧は、線香に火を点け両手を合わせる。そしててゆっくりと瞳を閉じた。


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