耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
美寧の焼香が済むと、持って来た掃除道具を手に来た道を戻る。
正午までまだ時間はあるが、夏の盛りの陽射しが容赦なく照りつける。
被っているつばの広い帽子だけではその暑さから逃れることは出来ず、美寧は木立が作った影を選ぶように歩いていた。深緑の木々からは蝉の大合唱が耳の奥まで響いてくるようだ。
時折山の方から吹いてくる風が、腰まで伸びた美寧の髪をふわりと揺らしていく。
被っている帽子が飛んでしまわないように、広いつばを手で押さえながら後ろを振り向くと、すぐ後ろを歩いていた怜が足を止めていた。
「れいちゃん?」
呼びかけると怜は、
「すこし道草をくってもいいでしょうか?」
そう美寧に訊ねた。