耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「ここでこうして墓参りの後にいなり寿司を食べるのが、俺の家では盆の恒例になっていて――」
祖父の祖父、つまり怜にとっての高祖父にあたる人が、いなり寿司が好物だったことから始まっているらしい。
昔はいなり寿司を備えたお墓の前で、みんなでいなり寿司や他のおかずを広げお花見のように宴会をしていたそうだ。
時代は流れ、墓地も増えて昔のように宴会をすることはなくなった。
ゴミや野生の動物などの喰い荒しの観点からお供え物は持ち帰ることになり、それなら、と、こうして休憩スペースで弁当を広げてお供え共々食べてから帰宅することになったそうだ。
「ここでこうしていなり寿司を食べた最初の記憶は、おそらく三歳くらいでしょうか。両親と祖父母の五人でした」
真っ直ぐ景色に顔を向けらたまま、いつもと同じ表情で坦々と語る怜。
美寧はその怜の横顔を、瞬きもせずじっと見つめていた。
「けれどそれは俺が小学生の時までで――」
空の青さを映した瞳は、揺らぐことなく遠くを見つめる。
「中一の時に両親は事故で亡くなりました」
美寧は丸い瞳を、こぼれんばかりに見開いた。
祖父の祖父、つまり怜にとっての高祖父にあたる人が、いなり寿司が好物だったことから始まっているらしい。
昔はいなり寿司を備えたお墓の前で、みんなでいなり寿司や他のおかずを広げお花見のように宴会をしていたそうだ。
時代は流れ、墓地も増えて昔のように宴会をすることはなくなった。
ゴミや野生の動物などの喰い荒しの観点からお供え物は持ち帰ることになり、それなら、と、こうして休憩スペースで弁当を広げてお供え共々食べてから帰宅することになったそうだ。
「ここでこうしていなり寿司を食べた最初の記憶は、おそらく三歳くらいでしょうか。両親と祖父母の五人でした」
真っ直ぐ景色に顔を向けらたまま、いつもと同じ表情で坦々と語る怜。
美寧はその怜の横顔を、瞬きもせずじっと見つめていた。
「けれどそれは俺が小学生の時までで――」
空の青さを映した瞳は、揺らぐことなく遠くを見つめる。
「中一の時に両親は事故で亡くなりました」
美寧は丸い瞳を、こぼれんばかりに見開いた。