耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
愛する家族に置いていかれる悲しみを、美寧はよく知っている。

夢なら醒めて、と願わずにはいられないほどの悲しみーー
息を吸うのも苦しいほど胸を襲う痛みに、堪えようもなく溢れ出る涙ーー

大きすぎる悲しみは痛みによく似ている。

子どもの時の怜が抱えなければならなかった痛みを想うだけで、美寧は胸が苦しくてたまらなくなった。

体が勝手に動き、ベンチから立ち上がる。

「ミネ?」

急に立ち上がったミネを不思議に思った怜が呼ぶ。

それに応えることなく、美寧は両手で怜の体を抱き締めた。

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