耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
座ったままの怜の頭を抱き込むように腕で囲む。
美寧の胸元に顔をつけた怜は、その細い腕の中で何も言わずじっとしている。

怜の頭の先に顔を寄せると、甘さのあるスパイシーな香りがふわりと美寧の鼻をくすぐった。

「私がいるよ……」

気持ちと一緒に、腕に力を込める。

「これからはずっと、一緒にいるから……だから……」

(あなたはひとりじゃない)

そう、想いを込めて怜を抱きしめた時、美寧の背中に怜の腕が回された。

ぎゅっと強く抱きしめ返される。
怜が同じ気持ちだと美寧に伝え返してくる。

しばらくの間美寧と怜は、そうしてお互いの体を抱きしめあっていた。
蝉の合唱がただずっと二人の間に降りそそいでいた。




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