耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
(来年、か……)
怜は声に出さず独り言ちる。
(来年の今頃―――ミネはまだここに居るのだろうか……)
何も聞いていない、聞かない。けれど、知りたくないわけではない。
一応恋人という肩書は得ているものの、一歩踏み込むにはまだ決定的な何かが足りない。
(せめてミネの気持ちがもっと俺に向いてくれたら……)
好かれているのは分かっている。けれどそれが、【ラプワール】のマスターへの好意と違うかと問われれば、違うと言い切れる自信はない。比べる相手として間違っているかもしれないが、今のところ血の繋がらない異性と言えば彼しか思い当たらないのだ。
少なくとも彼よりは好かれていると思いたい。妙に対抗意識を持ってしまうのは、事あるごとに大人の余裕を見せつけられるせいかもしれない。
だからだろうか。キッチンで『だいすき』と言われた時、これまで感じたことのない喜びが沸き上がった。
と同時に、そんな自分にも驚く。
誰かに嫉妬したり対抗意識を持ったりすることも、『大好き』という一言がこんなにも嬉しいことも。こんなふうに余裕のない自分は初めてで、自分でも戸惑ってしまうこともあるが、そんな自分も嫌いではない。
自分を変えることも厭わないほど、愛おしいと思える相手に出会えた。ただそれだけ。
熱いシャワーを頭から浴びると、汗と一緒に頭の中にまとわりついている何かが流れしていくような気がした。