耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
数メートルの距離を開けて目が合う。その男性は、とても整った容姿をしていた。

間近で見なくても分かるほどのスッと通った鼻筋と厚すぎない唇、そして印象的な奥二重の瞳が、小さな顔の中にバランスよく納まっている。ダークブラウンの短い髪は、彼を精悍に見せていた。
スラリとした体は怜よりも少し高いくらいで、広い肩幅と分厚い胸板は何かスポーツをしているのかもと思わせる。


見知らぬ男性との遭遇に美寧はその身を固くした。そんな彼女の方へ男性はその長い脚を一歩踏み出そうとした。

美寧は胸の前で日傘の柄を持つ両手を強く握りしめた。片足が少しだけ後ろに引いて、何かあればすぐにでも身をひるがえしてこの場から逃げ出そうと身構える。警戒心を露わにしたその様子は、普段の人懐っこい彼女からとは全く別人のようだ。


「君は――」

その男性が言葉を発した拍子に、美寧の体が大きくビクリと跳ねる。そしてすぐさまその大きな瞳がふにゃりと歪められた。それを見て、男性は驚いたように息を飲んだ。

言いようもない緊張感が二人の間に漂う。

そのピンと張った糸を断ち切ったのは、引き戸の開く大きな音だった。

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