耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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大きく枝を広げた木立の隙間から、キラキラとまぶしい陽射しが差し込む。
雨上がりの湿った土の匂いを吸い込むと、庭の片隅の薄紫の花が目に入った。梅雨の晴れ間を待っていたかのように、山紫陽花が満開を迎えている。
青青とした葉が作る木陰の下で、膝を抱えて小さな体を更に小さく折りたたむと、頭の上から降ってくる蝉の声が、目に見えないカーテンみたいに自分を隠してくれる気がした。
「美寧―――ここにいたのか」
掛けられた声に顔を上げようとした瞬間、目の前が暗くなる。頭の上に手を当てると、帽子だった。
「今日は暑くなる。ちゃんと被っておかないと倒れてしまうぞ?」
帽子の上からポンポンと軽く撫でられ、美寧は小さく頷いた。
涼し気な水色のリボンが付いた麦わら帽子は、八歳を迎えた先月、誕生日プレゼントとして祖父から贈られたものだ。
雨が止んだら、早くこの帽子を被って外へ遊びに行きたいと思っていたのに、美寧はそれすらも忘れてしまっていた。
「……ありがとう、おじいさま」
広いつばを持ち上げてそう言うと、祖父は微笑みながら「ここは涼しいな」と言って、ゆっくりとした動きで隣に腰を下ろした。
大きく枝を広げた木立の隙間から、キラキラとまぶしい陽射しが差し込む。
雨上がりの湿った土の匂いを吸い込むと、庭の片隅の薄紫の花が目に入った。梅雨の晴れ間を待っていたかのように、山紫陽花が満開を迎えている。
青青とした葉が作る木陰の下で、膝を抱えて小さな体を更に小さく折りたたむと、頭の上から降ってくる蝉の声が、目に見えないカーテンみたいに自分を隠してくれる気がした。
「美寧―――ここにいたのか」
掛けられた声に顔を上げようとした瞬間、目の前が暗くなる。頭の上に手を当てると、帽子だった。
「今日は暑くなる。ちゃんと被っておかないと倒れてしまうぞ?」
帽子の上からポンポンと軽く撫でられ、美寧は小さく頷いた。
涼し気な水色のリボンが付いた麦わら帽子は、八歳を迎えた先月、誕生日プレゼントとして祖父から贈られたものだ。
雨が止んだら、早くこの帽子を被って外へ遊びに行きたいと思っていたのに、美寧はそれすらも忘れてしまっていた。
「……ありがとう、おじいさま」
広いつばを持ち上げてそう言うと、祖父は微笑みながら「ここは涼しいな」と言って、ゆっくりとした動きで隣に腰を下ろした。