耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「どうかしたのですか?どこか痛いところでもあるのですか?」

訊ねると美寧は小さく横に首を振る。そして「なんでもない」と震える声で言う。

「でも、泣いてる。……怖い夢でも見ましたか?」

柔らかな髪をそっと撫でる。

「怖くは、なかった……でも……とても悲しい夢だったの……」

「そうですか……」

頭から背中にかけて撫でていると、美寧の小さな震えが少しずつ収まってきた。
ぐずぐずと鼻を鳴らす美寧の額に、怜はそっとくちづけを落とす。そして両手で頬を包んで持ち上げ、頬に伝う雫を丁寧にその唇で吸い取った。

いつもの美寧なら恥ずかしがって慌てるはずなのに、今日は大人しくされるがまま。そんな彼女の様子に、怜はさっきの言葉がこれまでとは違うものだと思い始める。

涙と震えの止まった彼女の唇に軽いくちづけを落とすと、怜はゆっくりと訊ねた。

「ミネ……さっきのは本当?」

「ん?」

「さっき俺に言ったこと……」

「う、うん……私ね、気付いたの。れいちゃんのこと……おじいさまのことを好きな気持ちとは、」

続く言葉は、来客を告げる呼び鈴で遮られたーーー






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