耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


「さんしゃい」

美寧に向かって小さな指が三本、突き立てられている。
襖の隙間から覗いていた犯人は今、ユズキの膝にちょこんと座っていた。

(うわぁ、天使みたい……)

色素の薄いふわふわの髪に、丸い顔丸い瞳。小さな唇に林檎のようなほっぺた。
美寧はこの小さなお客に見とれていた。

ユズキは診察中よりも美寧から少し離れて座っている。万が一美寧がウィルス性の風邪だった場合に“彼”に移さないよう、そして逆に弱っている美寧に“彼”の菌を移さないように配慮したのだ。


「たける。まずはお名前を言わないと」

「くじゅみ たける。さんしゃいれす!」

「はい上手」

小さな頭を撫でるユズキの顔が蕩けるように甘い。これまで見たことのないような表情の女性医師に、美寧は目を丸くした。けれど、慌てて自分も自己紹介をする。

杵島美寧(きじまみね)、二十一歳です」

「あい、じょーじゅ」

舌の回らない可愛らしい言葉に、美寧は思わず微笑んでしまう。

「かわいい……」

「でしょ?可愛いでしょ!?ほんと、たけるってば天使!」

目を輝かせたユズキが、両目をつぶって健に頬ずりをする。彼女の膝の上で健が、きゃっきゃと声を上げながら体を捩った。

「まま、くしゅぐったい~」

「えっ、ママ!?」

健の言葉に、美寧は目を見張った。
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