耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


「れいちゃんのことが好き……おじいさまとは違う“好き”。だからおねがい……ずっと一緒にいてね……」

小さく聞こえた言葉に、怜は思わず手を止めた。
言葉を発した本人は、すやすやと可愛らしい寝息を立てている。どうやら今の台詞を最後に本格的に眠ってしまったようだ。

安らかな寝顔を見下ろしながら息を詰めていた怜は、しばらくするとふーーーと長い息を吐き出した。

「寝言じゃないですよね?起きたら今度はちゃんと俺を見て言ってくださいね」

起こさないように気を付けながら、そっと髪を撫でると、美寧が寝ながらふにゃっと笑う。
可愛らしい寝顔に、怜の口元が自然と緩む。
思えば最初に彼女の笑顔を見たのも、今日と同じカラメルプリンを作って出した時だった。


ここに来てすぐの頃、出されたものにきちんと手を合わせて『いただきます』と『ごちそうさま』は口にするけれど、全然気持ちが籠っていない。それどころか“食事”そのものを(いと)うようなそぶりがあった。

食事自体もほんの少ししか食べない彼女に、怜は悩んだ。
美寧を診て貰った友人医師からは、『快復に重要なのは、栄養と休養』と念を押された。『もしかしたら一番大事なのは心の栄養かもしれない』とも。

確かに柚木が言うように、彼女に一番必要なのは『心の栄養』かもしれない。
仄暗く翳る瞳を見ながら、怜はそう感じていた。

けれど、実際はやせ細った彼女のフィジカル面の栄養の方を、ひとまず優先的に考えることにした。
色々と考えた末行き着いたのが、今日の“カラメルプリン”だったのだ。
怜は、初めてそれを口に入れた時の美寧の様子を思い出した。

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