耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
(ここ数日、少し沈んでいるように感じたのですが……)

微熱が下がった美寧は一見元気そうには見えていたけれど、ふとした時にぼんやりとすることがあった。そして日に日にそれが増えていく。
物憂げな瞳に、『どうかしましたか?』と訊ねても、首を横に振るだけ。
そんな彼女の気晴らしもかねて、水族館(ここ)へ誘ったのだった。


(あの時の言葉もまだ、ですしね。でも―――)

眠りながら呟いた美寧の『告白』。本当はそれを、透き通った大きな瞳を見つめながら聞きたいと思っている。
けれど怜は、美寧が自分から口にするまでいつまでも待つつもりでいた。

(言わせても意味はない)

いつでも、彼女が自分のところに飛び込んでくるのを待っている。
その時はきっと彼女を離さない。
小さな横顔を見ながら、怜はそう思った。


怜の視線に気が付いた美寧が、こちらを見上げてくる。目が合うと、子猫のような丸い瞳を細めてはにかむ。
反射的にその唇を攫った。

「れ、れ、れ、れ、……」

怜の名前も言えないほど動揺する美寧。青白い光の中でも、頬が朱に染まっていくのが分かる。
怜は美寧の耳元に口を寄せて囁いた。

「みんな水槽に夢中で誰も見ていません」

繋いだ手にさっきよりも力を込めると、赤くなった顔を伏せた美寧が、同じように握り返してきた。


クラゲの水槽をしばらく堪能した後、可愛いペンギンたちの華麗な泳ぎに見惚れ、大水槽の前でイワシの群れとマンタの遊泳に感嘆の声を上げた。

たっぷりと堪能した後、美寧と怜は水族館を後にした。


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