耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

苦し気な胸の内を吐露した言葉を最後に、黙ってしまった美寧。
そんな彼女を抱きしめながら、怜はその小さな背中をそっと優しく撫で続けた。

打ち寄せる波の音だけが、二人を包む。山並みに沈んでいく夕陽に照らされて、海面がキラキラと輝く。

「ミネ」

低く落ち着いた声が呼ぶ。怜が自分を呼ぶときの声が好きだ。
大好きな声に呼ばれ、美寧はゆっくりと顔を上げた。

「ミネ、これを―――」

怜が上着のポケットから何かを取り出した。握っているものが何か良く見えないけれど、美寧は差し出された手の下に、自分の手のひらを上向きに出した。

「お土産です」

手のひらにそっと乗せられたものに目を遣る。

「あっ……」

丸いこんもりとした透明の包みの中に、青、水色、薄紫、の小さな粒が入っている。
それはまるで―――

「あじさいだぁ………」

「はい」

「金平糖?」

「ええ」

美寧の手にひらにちょうど収まる大きさのそれは、紫陽花に見立てた金平糖。金平糖が包んでいる透明のフィルムの横には、緑の葉が一枚付いている。
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