耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
梅雨のあの日、紫陽花の茂みで倒れていた彼女をこの家に連れて帰ってきた。
熱が下がると自分の家に帰るかと思った彼女は、そのまま藤波家に居着いた。

一緒に暮らすようになってまず怜が驚いたのは、彼女の食事を取る量。幼児でももっとたくさん食べられるのではないかと思えるほど、その量は少なかったのだ。
好き嫌いやアレルギーがあるわけはない。ただいっぺんに食べる量がほんの少しなだけ。
怜は、少しでも彼女が食べやすい物、栄養が取れるものを模索した。
そして行き着いたのが、『玉子料理』だったのだ。


玉子を茹でている間にサラダの用意をする。
リーフレタス、トマト、キュウリを洗って切る。その上に乗せるのは、カリカリに焼いたカットベーコンと釜揚げしらす。食べる時に手作りのシーザードレッシングをかける。

サラダが出来上がった頃に、タイマーが時間を知らせた。

鍋から出した玉子を流水で冷やし、丁寧に殻を向く。荒く刻んだ白身と半熟の黄身。そこにマヨネーズと塩、たっぷりの黒胡椒をミルで引いて入れた。美寧は意外と香辛料や香味野菜が効いた味が好きなようだ。
隠し味の水を少しだけ垂らしてから、怜はボウルの中身をさっと混ぜ合わせた。

玉子の準備が出来ると、戸棚からパンを出す。昨日商店街の【ベーカリー小川】で買ってきたライ麦パンだ。あらかじめサンドイッチ用にスライスしてある。それにバターとからしを塗っていき、出来上がった玉子を挟んだ。
皿の上からラップをし、少し置いておく。そうすることで具が馴染むのだ。

時計を見ると、まだ六時過ぎ。美寧を起こすまでまだ一時間近くある。怜はエプロンを外すと、洗濯機を回しにお風呂場へと行った。

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