耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
カチッとスイッチが切り替わる音がして、頭に吹き付ける風が熱風から冷風に変わった。

「はい、終わりです。あとは冷風で冷やすだけですよ」

美寧は、怜の手が優しく髪を揺らしながら髪に籠った熱を冷ましてくれる心地良さに、うっとりと瞳を閉じた。


美寧の髪は怜が乾かす。それは藤波家(ここ)に来た当初から変わらない。

背中から腰にかけてふわふわと波打つ美寧の髪は、猫っ毛とその長さから美寧本人にはまだ上手く扱えない。

流石に後ろで軽く一つに括るくらいは出来るようになったけれど、アルバイトの時の凝ったまとめ髪は毎回怜がしてくれる。
特にドライヤーは、以前自分でチャレンジしてみた時に危うく火傷しそうになったことがあった。以来、ずっと怜に甘えたままになっている。


忙しい怜の手を煩わせるのは申し訳なくて何度か自分でやってみたものの、怜に乾かしてもらうようには上手く乾かせない。

―――というのは建前で、本当は怜に乾かしてもらうのが好きなのだ。

彼の長い指で優しく髪を()かれると、うっとりとした心地になり、猫のように喉を鳴らしたくなってしまう。
熱風に耐えられるのなら、本当はいつまでもそうしていたいくらいだ。


「はい。出来ました」

「ありがとう、れいちゃん!」

振り向いて笑顔で言った美寧の額に、怜の口づけが落とされた。

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